2006年短歌研究新人賞応募作品
2006年 08月 27日
「覚えなき」
マラソンの山場を越えてゆくように楽に記憶をなくしはじめる
なぜすがりついているのか かたくなに蔓薔薇の咲くはつなつの駅 ★
青き窓こじあけらるる雲間より小さき羊のこぼれ出でむか
可愛いとなでられて笑むれんげ草みたいにブルグミューラーを弾く ★
失くしたかどうかわからぬ日の暮れをしずめるごとくひびく鐘の音
過去形にかたれば朽ちたガーベラも闇のはなしもあわきものなり
スケジュール帳の予定は湧き水のごとくあふれぬ わたくしの字で ★
単身赴任はゲームと思え つらつらと無為にかさねてゆく経験値 ★
口に出さぬことにもなれた平日の椅子のひとつはつめたきままに
忌まれつつ消ゆる台風1号と子の成績を君につたえむ
うつしみの過敏な耳をもてあまし狭き世にふる雨のまえぶれ
「ただいま」の携帯メールはぬくもりをこぼしつつ我がもとに届きぬ ★
ひとしずくの雨かもしれず 沈黙の君のつぼみをひらく手だては ★
いずこへもゆけぬ/かえれぬたましいをはぐくむ森の空にあるらし
保険証を家にもたざる夫の飲む葛根湯の鎮座ましまし
冷凍のパックにつめたひと切れの魚がほしい花いちもんめ
なにげない暮らしの中に流れえぬ水となりたる言の葉を捨つ
今日は昨日のつづきなれども子らの背と不在の日々の伸びてゆきたり
未開封の給与明細 あきらめを絵にかくならばこんなかたちだ ★
しずもれる卓の荒野を東西にわかてる風の吹きはじめおり
わたつみを遠く聞きつつすれちがうことはわすれることと知る夜
永遠に追いつかぬまま豊橋の路面電車は街をはしりぬ ★
病院へゆけゆくゆかむ迷う間もわずかにすすむ細き秒針
鬱病とたんなる呆けとひとしきりめぐりトマトを刻みたりけり
わたくしの壊るるほどにすこやかに真白き花をひらくペチュニア
覚えなき卵パックを手にとりて記憶の井戸の淵にたたずむ
こころにはガードレールの無きことを芝居のごとく告ぐる口元 ★
やさしさのせいだといえば熟れすぎたいちごぐつぐつ煮崩れてゆく ★
ただ一羽川面をゆけるしらさぎをみゆ。しらさぎを我はみたりき。
霧の夜はぬるき匂いにつつまれて子らの寝息を壁ごしに聞く
行明けは読みやすくするためにここで入れたものです。作品にはありません。
★印が掲載された歌です。
:・'゜☆。.:*:・'゜★゜'・:*:.。:*:・'゜☆。.:*:・'゜★゜'・:*
2006年短歌研究新人賞の最終選考に残り、
30首のうち10首が掲載された。
最終選考に残るなんて初めて♪
選者は、岡井隆、高野公彦、馬場あき子、永田和宏、石川不二子、道浦母都子の
6人の諸先生方。
最初の段階で先生ひとりあたり4作品を選び、
それがそのまま「最終選考作品」となるらしい。
いったいどなたが選んでくださったのか、気になる。
9月号のあっちをみたりこっちを開いたりしていたら
上の子に「母さん、そんなにうれしい?」と笑いながら呆れられた。
うーん、うれしいというか不思議というか信じられないというか。
やっぱりうれしいんだけど。(笑)
それにしても・・・
こうして活字になって読み返してみると
欠点をいくらでもあげつらうことができる。
これが他人の歌だったら、思いっきり言いたい放題言うだろう。
なんかすっきりしないんだよなぁ。
ああ、もう、ホントに。
マラソンの山場を越えてゆくように楽に記憶をなくしはじめる
なぜすがりついているのか かたくなに蔓薔薇の咲くはつなつの駅 ★
青き窓こじあけらるる雲間より小さき羊のこぼれ出でむか
可愛いとなでられて笑むれんげ草みたいにブルグミューラーを弾く ★
失くしたかどうかわからぬ日の暮れをしずめるごとくひびく鐘の音
過去形にかたれば朽ちたガーベラも闇のはなしもあわきものなり
スケジュール帳の予定は湧き水のごとくあふれぬ わたくしの字で ★
単身赴任はゲームと思え つらつらと無為にかさねてゆく経験値 ★
口に出さぬことにもなれた平日の椅子のひとつはつめたきままに
忌まれつつ消ゆる台風1号と子の成績を君につたえむ
うつしみの過敏な耳をもてあまし狭き世にふる雨のまえぶれ
「ただいま」の携帯メールはぬくもりをこぼしつつ我がもとに届きぬ ★
ひとしずくの雨かもしれず 沈黙の君のつぼみをひらく手だては ★
いずこへもゆけぬ/かえれぬたましいをはぐくむ森の空にあるらし
保険証を家にもたざる夫の飲む葛根湯の鎮座ましまし
冷凍のパックにつめたひと切れの魚がほしい花いちもんめ
なにげない暮らしの中に流れえぬ水となりたる言の葉を捨つ
今日は昨日のつづきなれども子らの背と不在の日々の伸びてゆきたり
未開封の給与明細 あきらめを絵にかくならばこんなかたちだ ★
しずもれる卓の荒野を東西にわかてる風の吹きはじめおり
わたつみを遠く聞きつつすれちがうことはわすれることと知る夜
永遠に追いつかぬまま豊橋の路面電車は街をはしりぬ ★
病院へゆけゆくゆかむ迷う間もわずかにすすむ細き秒針
鬱病とたんなる呆けとひとしきりめぐりトマトを刻みたりけり
わたくしの壊るるほどにすこやかに真白き花をひらくペチュニア
覚えなき卵パックを手にとりて記憶の井戸の淵にたたずむ
こころにはガードレールの無きことを芝居のごとく告ぐる口元 ★
やさしさのせいだといえば熟れすぎたいちごぐつぐつ煮崩れてゆく ★
ただ一羽川面をゆけるしらさぎをみゆ。しらさぎを我はみたりき。
霧の夜はぬるき匂いにつつまれて子らの寝息を壁ごしに聞く
行明けは読みやすくするためにここで入れたものです。作品にはありません。
★印が掲載された歌です。
:・'゜☆。.:*:・'゜★゜'・:*:.。:*:・'゜☆。.:*:・'゜★゜'・:*
2006年短歌研究新人賞の最終選考に残り、
30首のうち10首が掲載された。
最終選考に残るなんて初めて♪
選者は、岡井隆、高野公彦、馬場あき子、永田和宏、石川不二子、道浦母都子の
6人の諸先生方。
最初の段階で先生ひとりあたり4作品を選び、
それがそのまま「最終選考作品」となるらしい。
いったいどなたが選んでくださったのか、気になる。
9月号のあっちをみたりこっちを開いたりしていたら
上の子に「母さん、そんなにうれしい?」と笑いながら呆れられた。
うーん、うれしいというか不思議というか信じられないというか。
やっぱりうれしいんだけど。(笑)
それにしても・・・
こうして活字になって読み返してみると
欠点をいくらでもあげつらうことができる。
これが他人の歌だったら、思いっきり言いたい放題言うだろう。
なんかすっきりしないんだよなぁ。
ああ、もう、ホントに。
by minorimay
| 2006-08-27 22:51
| 短歌研究詠草