青山みのりの部屋


by minorimay
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「覚えなき」

マラソンの山場を越えてゆくように楽に記憶をなくしはじめる
なぜすがりついているのか かたくなに蔓薔薇の咲くはつなつの駅 ★
青き窓こじあけらるる雲間より小さき羊のこぼれ出でむか
可愛いとなでられて笑むれんげ草みたいにブルグミューラーを弾く ★
失くしたかどうかわからぬ日の暮れをしずめるごとくひびく鐘の音
過去形にかたれば朽ちたガーベラも闇のはなしもあわきものなり
スケジュール帳の予定は湧き水のごとくあふれぬ わたくしの字で ★

単身赴任はゲームと思え つらつらと無為にかさねてゆく経験値 ★
口に出さぬことにもなれた平日の椅子のひとつはつめたきままに
忌まれつつ消ゆる台風1号と子の成績を君につたえむ
うつしみの過敏な耳をもてあまし狭き世にふる雨のまえぶれ
「ただいま」の携帯メールはぬくもりをこぼしつつ我がもとに届きぬ ★
ひとしずくの雨かもしれず 沈黙の君のつぼみをひらく手だては ★
いずこへもゆけぬ/かえれぬたましいをはぐくむ森の空にあるらし
保険証を家にもたざる夫の飲む葛根湯の鎮座ましまし
冷凍のパックにつめたひと切れの魚がほしい花いちもんめ
なにげない暮らしの中に流れえぬ水となりたる言の葉を捨つ
今日は昨日のつづきなれども子らの背と不在の日々の伸びてゆきたり
未開封の給与明細 あきらめを絵にかくならばこんなかたちだ ★
しずもれる卓の荒野を東西にわかてる風の吹きはじめおり
わたつみを遠く聞きつつすれちがうことはわすれることと知る夜 

永遠に追いつかぬまま豊橋の路面電車は街をはしりぬ ★
病院へゆけゆくゆかむ迷う間もわずかにすすむ細き秒針
鬱病とたんなる呆けとひとしきりめぐりトマトを刻みたりけり
わたくしの壊るるほどにすこやかに真白き花をひらくペチュニア
覚えなき卵パックを手にとりて記憶の井戸の淵にたたずむ
こころにはガードレールの無きことを芝居のごとく告ぐる口元 ★
やさしさのせいだといえば熟れすぎたいちごぐつぐつ煮崩れてゆく ★
ただ一羽川面をゆけるしらさぎをみゆ。しらさぎを我はみたりき。
霧の夜はぬるき匂いにつつまれて子らの寝息を壁ごしに聞く


行明けは読みやすくするためにここで入れたものです。作品にはありません。
★印が掲載された歌です。

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2006年短歌研究新人賞の最終選考に残り、
30首のうち10首が掲載された。

最終選考に残るなんて初めて♪
選者は、岡井隆、高野公彦、馬場あき子、永田和宏、石川不二子、道浦母都子の
6人の諸先生方。
最初の段階で先生ひとりあたり4作品を選び、
それがそのまま「最終選考作品」となるらしい。

いったいどなたが選んでくださったのか、気になる。

9月号のあっちをみたりこっちを開いたりしていたら
上の子に「母さん、そんなにうれしい?」と笑いながら呆れられた。
うーん、うれしいというか不思議というか信じられないというか。
やっぱりうれしいんだけど。(笑)


それにしても・・・

こうして活字になって読み返してみると
欠点をいくらでもあげつらうことができる。
これが他人の歌だったら、思いっきり言いたい放題言うだろう。

なんかすっきりしないんだよなぁ。
ああ、もう、ホントに。
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by minorimay | 2006-08-27 22:51 | 短歌研究詠草

2006年9月号

唐突な<帰るコール>に増やしたる野菜炒めのキャベツ、ため息
一膳の箸とラップをかけられたおかずの皿の冷えゆくままに
寝坊するこころづもりの土曜日の未明いつしか雨降りはじむ ★
帰るのも帰らないのも辛かろう 単身赴任の夫をまつ夜
波風をたてずに暮らすこの部屋の金魚モビールあせてゆきたり ★

★印が掲載された歌です。

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8月号から一転、2首掲載に転落。(苦笑)

7月号で「そうか~、高野さんだった~」と送る歌の方向性を変え、
今月もリアリティのある歌を送ったつもりだったのだが。

でも今、読み直してみると
1・2・4首目の歌ってかなり底の薄い歌だ。
どうして送る前の推敲の時点で、このことに気がつかないのか。
私に足りないのは「客観的な目」なのかもしれない。

あ、それと技術と知識。
つまりほとんど全部ぢゃん。(くそー)


それと今月号は村本希理子さんが準特選に入っていた。
おめでとー♪(*^^)//。・:*:・゚'★,。・:*:♪・゚'☆パチパチ
選後感想に「物のイメージを印象的に描き出す点で優れた作者である」とあって
そうそうそうそう!そうなんだよ!とうなずきながら読んだ。

希理子さんは、感覚を文字、そして比喩で表現するのがとても巧い。
しかもその比喩は読み手の心の襞をかすめる。
「突く」のではなく、「素通りする」のでもなく、
絶妙に「かすめる」のである。
これができるのって、すごくうらやましい~。


「芳一」と唱えつつ塗る日焼け止め耳朶の裏おもて隈なく/村本希理子
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by minorimay | 2006-08-27 22:14 | 短歌研究詠草

2006年8月号

読み聞かせボランティアとう名のもとに雪降らせいる春の教室 ★
大型絵本、パネルシアター、効果音 気をひくための裏道をゆく ★
泣かぬまま泣かせるために赤鬼のセリフは文字で覚えたりけり ★
仕掛けなどもたぬてのひら むうすんでひらいてのちの未来をきみに ★
カンガルーが出てくる本を何冊も飼育している夢にめざめぬ ★

★印が掲載された歌です。

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やったー!
高野公彦さんの準特選に入りました!
しかも一番最初(?)!
選後感想は以下の通り。

「読み聞かせボランティア」をしている人の歌である。
相手は幼稚園児であろうか。
読み聞かせという仕事の楽しさや苦労話が面白く語られており、
仕事に対する情熱が一連ににじみ出ている。
三首目は、自分が泣きそうになるのでセリフは声に出さず記憶した、という歌である。

そう、そうなんです。その通りなんです。
きちんと読んでいただいて、ありがとうございます。

・・・でもなぜか、心のどこかに引っかかるものがある。
歌の完成度と評価との誤差、かな。
ま、そういうことがわかる程度には上達したってことか。
可愛くないけど。
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by minorimay | 2006-08-27 22:05 | 短歌研究詠草

2006年7月号

植えらるる種ひとつぶの未来図は神、否、我の手の中にあり
草刈り機の濁音ののちベランダになにを運ばむ 川わたる風
すがるべきものにすがれる朝顔の蔓をつかのまみつめおりたり ★
間引きせし土の間(あい)より匂いたつシロツメクサのなつかしき日々
眼下はるかに緋色の犬のとぼとぼと夏まだあさき道をゆくらむ

★印が掲載された歌です。

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7~9月号は高野公彦さんの選。

高野さんはリアリティを重視するひと、という印象がある。
今月の私の歌にはそれが足りなかったなぁと反省。
どうも最近、適当に(こらこら)感覚だけで(おいおい)歌を作る傾向があって
こんなことを続けていてはいつかダメになるという危機感もあった。

さて、ゆっくり考えましょう。
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by minorimay | 2006-08-27 21:53 | 短歌研究詠草